★当院のアトピー性皮膚炎の診療について★

2022年09月16日

★静岡駿河区「いのうえ皮ふ科」の「アトピー性皮膚炎」のページです★

駿河区の方、静岡市の方、静岡県内の方 どうぞご相談ください。

アトピー性皮膚炎の診療に対する院長の思い

今まで私は軽症~重症型まで幅広い患者様をたくさん診察してきました。ステロイドが怖くて使えなくて体がただれた人や、痒みや見た目で精神的に悩んでいる方をたくさん診察してきました。私は患者様の気持ちの寄り添って、より患者様の近いところで診察をしたいと思い、この静岡市にて皮膚科クリニックを開業しました。当院はアトピー性皮膚炎の治療を含めた診療に全力で取り組んでいきます。

乳幼児から成人のアトピー性皮膚炎の方まで、患者さん一人一人の生活環境や皮膚の症状、検査などに合わせたオーダーメイド治療を行っています。最近はステロイド外用薬に加え、次から次に新規の外用薬や注射薬がでてきており、治療の選択肢も広くなってきました。アトピー性皮膚炎に継続的に悩まされている方はどうぞ当院にご相談ください。

当院の指針~オーダーメイド治療の実践について

当院では、①外用剤の治療を基本として、難治例には②紫外線の治療、③注射の治療を行います。3本柱を軸として、患者様のニーズに合わせて治療を行っています。

 

 

 

 

アトピーQ&A

アトピー性皮膚炎についてQ&A形式でまとめました。アトピー性皮膚炎のよくある質問をまとめましたのでご参考ください。

Q.アトピーかどうか検査で分かりますか?

検査では分かりません。症状から診断します。

 アトピー性皮膚炎の診断基準

   ①痒みがあること

   ②特徴的な皮疹と分布

   ③慢性・反復性の経過

     (乳児では2か月、それ以外では6か月以上症状が続く)

Q.湿疹ができている原因は何ですか?

アトピー性皮膚炎の原因について

 

Q.アトピーの合併症を教えてください。

アトピー性皮膚炎の合併症について

 

 

アトピー性皮膚炎の当院での治療方針について

①外用剤等の治療について

●当院では、ステロイド外用剤タクロリムス軟膏(商品名:プロトピックデルゴシチニブ軟膏商品名:コレクチムジファミラスト軟膏商品名モイゼルト)、保湿剤を使用しています。また、抗ヒスタミン薬の内服もおこなっていきます。これらを組み合わせることにより、痒みを抑え皮膚を良い状態に保つことを目標に、オーダーメイドの治療を提案します。

○外用剤の詳細

★ステロイド外用薬について★

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎のみならず、接触皮膚炎などの湿疹にも一般的に使用される薬です。弱いものから強いものまであり、いろいろな種類があります。そのため、いろいろなシチュエーションにも使えるので、アトピー性皮膚炎の治療でも基本薬として位置づけられています。ただし、長期使用ではステロイド萎縮やしゅさなどの副作用の懸念もあるため注意しながら治療を行う必要があります。

ステロイド外用剤の副作用について教えてください。

ステロイド外用剤の塗り方について教えてください。

★プロトピック軟膏について★

タクロリムス軟膏(商品名:プロトピック)は、アレルギーの炎症を抑えるだけでなく、そう痒に関連する皮膚神経系因子にも作用します。皮膚バリア機能の改善効果もあります。特徴として、使用開始1週間程度は刺激が出やすいですが、長期使用でも皮膚への副作用が少ないので、プロアクティブ療法がしやすいです。以下に示すコレクチム軟膏やモイゼルト軟膏に比べると抗炎症効果が強く、ステロイド外用薬のミディアム・ストロングクラスと同程度の強さを発揮するため、症状が少し強い寛解導入にも使用しています。価格面は比較的、安価です。

★コレクチム軟膏について★

デルゴシチニブ軟膏商品名:コレクチムは、2020年6月から使用できるようになったアトピー性皮膚炎の外用薬です。JAK阻害剤に分類される薬で、JAK-STAT経路に関わるあらゆる炎症を抑えます。JAK1、JAK2、JAK3、TYK2をすべて抑えるという画期的な薬剤ですが、外用剤であるため安全性も保たれるとともに、皮膚に直接、働きかけて抗炎症効果に働きます。結果的に、痒みや皮膚の炎症を抑えるとともに皮膚バリア機能の改善効果の作用、痒みに対する効果が分かっており、アトピー性皮膚炎の病態の大事なところに効果を発揮します。6か月の乳児からということで、比較的、早期から使用が可能であることも特徴です。プロアクティブ療法がしやすい薬となっています。

モイゼルト軟膏について

ジファミラスト軟膏(商品名:モイゼルト)は、20年もの開発期間をかけて作られたアトピー性皮膚炎の外用薬です。2022年6月から使用できるようになりました。PDE4阻害(特に炎症に関わるPDE4Bを特異的に阻害する)の働きによって皮膚の炎症を抑える薬です。感染症のリスクは非常に少なく、最近は皮膚バリア機能改善効果も分かってきました。また、実際に使用した臨床データでみると痒み改善効果もあり、早く効果が現れます。外用塗布量の制限がないため、広範囲の使用に最適という特徴があります。3か月の乳児から使用が可能ということで、早期から使用できることも特徴です。長期使用に向いている薬であり、プロアクティブ療法にも最適と考えています。

★保湿剤について★

アトピー性皮膚炎の方は皮膚が乾燥しています。保湿剤を使用して乾燥を防ぐことは、アトピー性皮膚炎を鎮静化することにも影響することが分かっています。必ず使用することをおすすめします。

保湿剤について(※別記事でまとめたので参照してください)

○トピックス:外用剤のコントロールの方法には、リアクティブとプロアクティブがあります。

A:リアクティブ療法  症状が悪化したら外用しておさえる

B:プロアクティブ療法 症状はないがおさまっても定期的に外用して悪化を防ぐ

2種をうまく使いながら、患者様のライフスタイルや皮膚の状態に応じて治療方針の参考にしています。

(関連記事)★プロアクティブ療法について★

○トピックス:内服薬の抗ヒスタミン薬について

当院ではアトピー性皮膚炎に対して抗ヒスタミン薬の内服薬を、以下の効果を期待して使用しています。

痒みを抑えます。の炎症を抑えます(インバース・アゴニストの理論から症状がおさまっても、しならく内服継続をすすめています。)

効果の素早さ効果の持続性など、内服薬によって特徴があります。効果が薄いと思っても、他の内服薬に切り替えて試してみるのも良いと思います。また、1日1回の薬インペアードパフォーマンスを向上させた薬(眠気などで活動性を低下させない薬)、食事に影響せず服薬タイミングを問わない薬など使いやすい薬も出てきています。いろいろご相談ください。

(関連記事)抗ヒスタミン薬におけるインペアードパフォーマンスについて

 

②紫外線治療について

性能の良いキャビン型紫外線治療機器を導入しており、外用剤だけではなかなかコントロールの難しい難治性のアトピー性皮膚炎の治療に活躍しています。

是非、ご相談ください。

○当院の光線治療機器の特徴は?

311 nm付近の波長を照射可能なナローバンドUVB機器で、全身照射可能なキャビン型の治療機器を置いています。42本のランプがあるため、従来のデルマレイよりも短時間に照射できます。全身に照射する場合で1/10の短縮になります。

○光線治療の実際

何回か当てる必要がありますので通院が必要です。週に2回で行うと効果が早く出ますが、多忙の方は週1回で行ている人もいます。費用は3割負担で、1回1020円です。

痛みは特になく、安心して治療ができます。

○関連記事

紫外線治療について

当院での紫外線治療Q&A も参考にしてください

 

③注射の治療について

当院では、主にデュピクセント(一般名:デュピルマブ)イブグリース(一般名:レブリキズマブ)にて治療を行っています。生物学的製剤に分類されるアトピー性皮膚炎の注射薬です。価格は高額になりますが、難治性の病態によく効きますので、アトピー性皮膚炎で日常生活に支障が出ている方は検討してみてはいかがでしょうか。注射の治療は当院では中学生以上とさせていただきます(※高齢の方はアトピー性皮膚炎とそれ以外の疾患の鑑別が必要になるため基幹病院を紹介させていただくことがあります。)また、アトピー性皮膚炎の痒みに効果のあるミチーガ(一般名:ネモリズマブ) の治療も行っています。

☆アトピー性皮膚炎の治療☆

デュピクセントとイブグリースの2剤があります。

○デュピクセントについて

2018年4月に発売された薬です。

適応条件として既存の治療で効果が不十分な方(具体的には、ステロイドなどの外用をしっかり塗っているが効果が得られない方ステロイド外用薬の副作用で十分な外用治療ができない方とあり、当院ではそのような方に行います。

IL-4、IL-13というサイトカインの働きを直接抑えることで、アトピー性皮膚炎で起きているTh2細胞による炎症を抑制するタイプの薬となります。アトピー性皮膚炎にてTyp2炎症を抑える効果は、気管支喘息特発性の慢性じんま疹の治療にも応用されています。

難治性の発疹とともに痒みにも効果があります。

特徴としては、症状を抑えるだけでなく、2週間おきを1年半~2年継続することにより長期寛解維持にも良いです。すなわち、アトピー性皮膚炎の病態に重要なTyp2炎症を継続的に抑えていきます。

「ペン型」をいう注射器を使うことにより、ご自宅で誰でも簡便に自分で注射ができるようになっています(※小児の場合はシリンジ型になる場合があります。)

デュピクセントについて(デュピクセント専用のページに詳細を書きましたので、参照してください。)

○イブグリースについて

★2024年5月31日に発売されます★

適応条件として既存の治療で効果が不十分な方具体的には、ステロイドなどの外用をしっかり塗っているが効果が得られない方ステロイド外用薬の副作用で十分な外用治療ができない方)とあり、当院ではそのような方に行います。

IL-13というサイトカインの働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎の炎症を抑える薬です。

難治性の発疹とともに痒みにも効果があります。

特徴としては、落ち着くまで2週間おきに注射し、落ち着いたら4週間おきに注射します。そして、ほとんど発疹が落ち着いている状態がそれでも続いている期間が6か月程度続いた場合は中止を検討します。半減期の長い薬であるという性質があり、中止後の再発も少ないのが特徴です。

このように従来の薬に比べて「症状に応じて投与間隔を伸ばせる」「中止後の再発は少ない」ことが大きな利点の薬です。

現在は新薬のため、院内で注射します。定期的に通院をお願いします。

☆アトピー性皮膚炎の痒みに対する治療☆
○ミチーガについて

2022年8月より登場した治療薬です。

IL-31というサイトカインの働きを抑えることで主に痒みに対して効果を強く早期に発揮します。

上記の薬に比べると痒みに対して早期に強く効果を発揮しますので、発疹よりも痒みで困っている方は選択肢となります。すなわち、アトピー性皮膚炎で発疹の出方は強くないが、痒みが強く生活に支障が出ている方に対して最適です。

発疹の改善効果については、経過中は浮腫性紅斑や皮疹の悪化がみられることがあります。しかし、痒みがなくなることにより、掻破して悪化する悪いサイクルも改善するということになり、最終的には発疹の状態が落ち着くという感じになります。

4週間に1回注射していきます。通院して院内で注射することも多いですが、処方して途中からご自身で注射することもできます。痒みが引いて寛解維持されても6か月は最低、続けることがガイドライン上、推奨されています。

発疹が強い場合はデュピクセントやイブグリースで治療してください。

 

治療薬についての補足

※ステロイド内服、免疫抑制剤(シクロスポリン)内服は、長期コントロールの必要なアトピー性皮膚炎では不向きのため当院では行っていません。

※新しい薬で、JAK阻害薬の内服薬(リンヴォックなど)があります。効果も強力との報告があります。こちらは、内服開始時に血液検査以外にもレントゲンなどの事前検査が必要であるため、基幹病院を紹介しています。その後は、当院にて継続内服の処方も可能です(ただし、内服開始後も定期的な血液検査・レントゲン検査も必要となり、その検査は当院では困難なため、基幹病院を受診していただいています。基本的には投与開始1か月後・3か月後・6か月後・12か月後・・に検査をしていきます。)

 

★アトピー性皮膚炎関連項目

アトピー性皮膚炎ガイドライン2021

アトピー性皮膚炎ガイドライン2016

乳児湿疹・乳児アトピー性皮膚炎の治療方針について

痒疹(ようしん)(いろいろな皮膚の病気シリーズ④)

(令和6年5月25日更新)